貧窮問答歌とは何か?【わかりやすく簡単な言葉で解説】

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貧しい雰囲気
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東京現代貧窮問答歌

貧窮問答歌(ひんきゅうもんどうか)
奈良時代の和歌です。

 

万葉集』第5巻に収められており、
優れた歌の一つとして知られています。

 

貧窮問答歌とは何か?
どのような和歌だったのか?などなど
貧窮問答歌について
この記事ではなるべくわかりやすく
簡単な言葉で解説していきます。

 

貧窮問答歌とは?

聴く歴史・古代『「貧窮問答歌」で生き方を説いだ知"の万葉歌人山上憶良』

貧窮問答歌とは奈良時代
歌人である山上憶良(やまのうえのおくら)
よって721年頃に作られた和歌です。

読み方は
ひんきゅうもんどうか”もしくは
びんぐうもんどうか”だそうです。

 

貧窮問答歌は長歌(ちょうか)
反歌(はんか)1首で成立されています。

 

貧窮問答歌ってどんな歌?

この貧窮問答歌は、貧しい者と
さらに貧しい者とが、貧乏生活を
問答の形で述べ合っています。

また里長による過酷な税の
取り立ての様子なども歌われています。

 

そこに表現されている貧窮の様子は
非常に写実的で、律令体制下の貧しい
農民たちの姿を分かりやすく伝えています。

 

貧窮問答歌の作者「山上憶良」ってどんな人?

万葉歌人の愛そして悲劇―憶良と家持 (NHKライブラリー)

貧窮問答歌の作者「山上憶良」は、
歌人であり、
従五位下の下級貴族の出身と伝わります。

また仏教や儒教の思想を身に着けており
死や貧、老、病などといったものに敏感でした。

 

そのため、官人という立場にありながら
班田法に基づいた重税に苦しむ農民など
社会的な弱者を写実的に歌っています。

 

柿本人麻呂山部赤人らとは違った
異色の社会派歌人として知られています。

 

貧窮問答歌の内容

新選万葉集 VOL-7 山上憶良「貧窮問答歌」 [DVD]

ここでは
貧窮問答歌の内容
紹介していきます。

 

最初は貧しい者が語りかけています。

風雑(まじ)り 雨降る夜の 雨雑り
雪降る夜は すべもなく 寒くしあれば
堅塩を 取りつづしろひ 糟湯酒(かすゆさけ)
うち啜(すす)ろひて 咳(しはぶ)かひ 鼻びしびしに
しかとあらぬ 髭掻き撫でて 吾(あれ)をおきて
人はあらじと 誇ろへど 寒くしあれば
麻衾(あさふすま) 引き被(かがふ)り布肩衣(ぬのかたきぬ)
ありのことごと 着襲(そ)へども 寒き夜すらを
我よりも 貧しき人の 父母は 飢ゑ寒からむ
妻子(めこ)どもは 乞ひて泣くらむ
この時は いかにしつつか 汝が世は渡る

【訳】風まじりに雨が降る夜、
雨まじり雪降る夜はどうしようもなく
塩を舐めながら糟湯酒をすすり、
咳をしながら鼻をすする。

少しはているヒゲをなでて、自分より
優れたものはいないだろうとうぬぼれているが
寒くて仕方がないので、麻の布団をかぶって
麻衣を何枚重ねても寒い夜だ。

私よりも貧しい人の父母は飢えてこごえ、
妻子は泣いているだろう。

どうやってあなたは暮らしているのか。

 

続いては、さらに貧しい者が
さらに悲惨な暮らしぶりを歌っています。

天地(あめつち)は 広しといへど 吾がためは
(さ)くやなりぬる 日月は明しといへど
吾がためは 照りや給はぬ 人皆か
吾のみやしかる わくらばに 人とはあるを
人並に 吾れもなれるを 綿も無き 布肩衣の
海松(みる)のごと わわけさがれる かかふのみ
肩に打ち掛け ふせいおの まげいおの内に
直土(ひたつち)に 藁解き敷きて 父母は 枕の方に
妻子どもは足の方に 囲みいて 憂へさまよひ
(かまど)には 火気(ほけ)吹きたてず 甑(こしき)には
蜘蛛の巣かきて 飯炊(いひかし)く 事も忘れて
ぬえ鳥の のどよひ居るに いとのきて 短き物を
端切ると 言えるが如く しもととる
里長(さとおさ)が声は 寝屋戸まで 来立ち呼ばひぬ
かくばかり 術なきものか 世の中の道

世間を憂しとやさしと思へども

飛び立ちかねつ鳥にしあらねば

【訳】天地は広いというが、私には狭い。

太陽や月は明るいというが、
私のためには照らしもしない。

他の人も皆そうなのか、私だけなのか。

人として生まれ、人並みに働いているのに
綿も入っておらず海松のように破れて
垂れ下がったものばかりを肩にかけて、
つぶれかかり曲がって傾いた家の中には、
地面に藁を敷いて、父母は枕の方に、
妻子は足の方に、私を囲むようにして
悲しんだりうめいたりしている。

かまどには火の気もなく、
米をにる器には蜘蛛の巣がはって
飯を炊くことも忘れてしまったようだ。

かぼそい声を出していると、
「短いもののはしを切る」とでも言うように
鞭をもった里長の声が寝床にまで聞こえる。

世の中というのはこれほど
どうしようもないものなのか。

この世の中は辛く、身も痩せるように
耐え難く思うけど、飛んでいくこともできない。

鳥ではないのだから。

 

最後に

新版 万葉集 一 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

貧窮問答歌とは何か?
どのような和歌だったのか?などなど
貧窮問答歌について
この記事ではなるべくわかりやすく
簡単な言葉で解説しました。

少しでもあなたの参考になれば幸いです。

 

 

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